こんにちはこんにちは、前田動物病院です!このページではCT検査に関して麻酔リスクなどの点から一歩踏み出す事がなかなか難しい状況が多い中で、なぜ先生が勧めるのか、メリットは?といったところをより皆さんに知っていただく事を目的として発信しています。
肥満細胞腫ってなに?
肥満細胞腫とは、肥満細胞という細胞(いわゆる”肥満”とは別です)が腫瘍化してしまう病気です。犬の皮膚腫瘍の中で最も多く、全皮膚腫瘍の約20%を占めるといわれています。実際に臨床の現場でも比較的よくみるものです。悪性度は様々で、ゆっくり進行するものもあれば急速に拡大し転移するものまであります。ある症例では1か月前に気づいた小さなしこりが来院時にはすでにかなり大きくなっており周囲に強い炎症を起こし始めていたこともあります。そして肥満細胞腫は腫瘍細胞から放出されるヒスタミンという物質の影響で嘔吐や血圧低下、場合によってはショック状態に陥り、命に関わることもあります。
診断はまず腫瘍に針を刺して細胞を採取することにより行います。この細胞診の結果、肥満細胞腫が疑われた場合には転移する可能性のある腫瘍のため全身チェック(血液検査や画像検査)を行います。
治療は多くの場合、外科的切除になりますが再発しやすく腫瘍の周りの組織まである程度一緒に切除しないといけません。全身転移がみられる状況では化学療法(抗がん剤など)が適用されることもあります。
今回協力してくれるのは10歳の犬のannaちゃん
それでは実際に肥満細胞腫と診断されたわんちゃんをご紹介します。
お腹あたりにしこりがあり触ると嫌がるとの事で来院。そこには約10cmの腫瘤を認めました。周囲はむくんでおり強く炎症を起こしていました。そこから採れた細胞の検査の結果、肥満細胞腫が疑われ、ご家族との相談の末、外科手術を行うことになりました。
今回の腫瘍は炎症を強く起こしていたため肉眼では腫瘍の全体像が把握しづらい状況でした。また転移している可能性もあるため他の臓器やリンパ節は問題ないかなどを厳密に評価する必要がありました。
CT検査の結果、この腫瘍の周りには発達した血管が多数走行していることがわかりました。また、臓器に明らかな塊状病変は認めなかったものの、一部のリンパ節が腫大していることがわかりました。断定はできませんが転移の可能性を考える必要があります。
このように術前に腫瘍の形状や周囲の血管走行を確認できたことでより安全でスムーズ(手術時間の短縮)、かつ他の臓器を併せて評価することで今後の治療がしやすくなりました。詳細な情報と明確な治療方針を共有することで飼い主様もより安心された様子でした。
現在は再発することなく良好な経過をたどっています。
あとがき
今回は「皮膚のしこり(肥満細胞腫)」についてCT検査を用いて診断・治療を行ったケースをご紹介しましたがいかがだったでしょうか。
皮膚のしこりは実際に手で触れるだけに気になりますよね。皮膚腫瘍は今回のような肥満細胞腫に限らず様々なものが存在します。いま皆さんが気になっているしこりがどのようなもので、どうするべきなのか、一度私たちと考えてみませんか?受診から各種検査までの流れや大まかな費用などご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください!